眼鏡やコンタクトレンズなどで視力を矯正している人は、国民の7割ともといわれています。その中にはレーシックやオルソケラトロジー(特殊なコンタクトレンズで角膜を矯正する施術)などで矯正している人や、眼内レンズを挿入した人もいます。つまり、多くの人たちが、目が見えにくくなったことを実感しています。そこで、目が見えにくくなる原因、病気について説明します。
近視
「目が悪くなった」というときにもっとも一般的なのが、「遠くが見えにくい」というものです。近くは比較的はっきり見ることができます。これは近視の状態です。
外界からの光はレンズの役割を果たす角膜と水晶体によって屈折し、網膜にピントが合うことでくっきりと見えるようになります。近くを見たり遠くを見たりを繰り返す際には、毛様体筋が水晶体の厚みを変えることで調整しています。近視は、網膜の手前にピントが合っている状態です。遠くのものを見るときに水晶体を十分薄くしてもピントが合わないために、遠方が見えにくくなります。屈折率だけではなく、眼球が前後に長く伸びてしまうことによって網膜にピントが合わなくなる病的近視もあります。
近視の原因
近視も遠視も網膜に正しくピントが合っていないという点で屈折異常といわれます。乱視もこれに含まれます。この屈折異常の原因ははっきりとは分かっていません。一般に、遺伝的原因と環境的原因があるといわれています。
親が近視の場合の遺伝率は90%近くに上るといわれていて、近視の遺伝子も発見されているようです。近視になる度合いは、生まれ持った遠視の強さによるといわれています。誰もが成長期に眼球の成長とともに近視化します。生まれ持った遠視の度合いが弱いほど、成長の過程で近視になると考えられています。
ただ、すべての近視を遺伝で説明することはできません。近くのものを見続けることを近業といいます。パソコン操作や、長時間の読書、勉強などがこれにあたります。こうした近業に眼が適応して近視になるというのが環境による原因説です。
近視の症状
近視の主な症状は以下のようなものです。
・遠くのものはぼやけて見える
・遠くのものにピントを合わせられない
・近くのものは見えやすい
近視の治療
角膜や水晶体の屈折率の問題で近視になっている場合には、眼鏡やコンタクトレンズなどで矯正することができます。
また、近年まで医療用のレーザーによって角膜を削りピントが合うようにするレーシックが広く行われてきました。結果として、ほぼすべての人が、日常生活で支障がない視力(0.7)以上に回復しているといいます。ただ、レーシックの手術後、原因不明の再近視化が起こることもあるようです。
現在、レーシックの手術件数は、全盛期の約4分の1となっております。
最近では、若年層向けに特殊なコンタクトレンズを装着して就寝することで角膜の形を矯正し、起床時にコンタクトレンズを外しても裸眼で一定の視力を獲得できるオルソケラトロジーという治療法もあります。
遠視
遠視は網膜よりも奥にピントが合っている状態です。よく、「遠視だから遠くはよく見える。けれど、近くが見えづらい」と思われていますが、これは誤解です。ピントが合っていないのですから、遠視は、遠くも近くもぼやけて見えづらいのです。
遠視の原因
目でものを見る際、近くのものにピントを合わせる時には毛様体筋が収縮して水晶体を厚くします。屈折異常がない眼の場合、5m以上の遠くを見るときには水晶体にはほぼ力が働いていません。いわば素のままの水晶体で見ているわけです。
遠視になった場合ピント位置が網膜の奥にあるために、素のままの水晶体では遠くを見るときも近くを見るときもピントが合わせにくく、つねに毛様体筋などに負荷がかかり、遠近ともに見えにくくなります。
遠視の症状
遠視の主な症状は以下の通りです。
・遠くも近くも見えにくい
・遠くのものにピントが合わない
・眼が疲れやすい
遠視では、近くを見るときにも遠くを見るときにも眼の筋肉を使って調整しようとするため、疲労が蓄積しやすく、眼精疲労を起こしやすくなります。
遠視の治療
眼鏡やコンタクトレンズによって矯正します。近視の場合、とくに眼鏡等を使用し続けなくても、必要な時に使用すれば問題ありませんし、そのことによって近視が進むこともありません。しかし、遠視の場合は眼精疲労のリスクがあるため、眼鏡等をかけ続けることをすすめられます。
老眼(老視)
老眼は老視ともいい、加齢によって水晶体の調節力が効きにくくなるために近くにピントが合いにくくなる状態です。調節力の衰えはすでに20歳代から始まっているといわれ、40歳前後から見えにくい症状が出はじめ、60歳代になる頃には目のピント調節力はほぼ失われているといわれています。
老眼の原因
水晶体の調節力が効きにくくなる原因は、老化によって、水晶体の厚みを変える毛様体筋の力が衰えることと、水晶体そのものが硬化して変形しにくくなることです。
老眼の症状
老眼の主な症状は以下のようになります。
・近くのものにピントが合いにくい
・眼が疲れやすく、眼精疲労になりやすい
・頭痛や肩こりなど頭部周辺でのコリを感じる
老眼の治療方法
もっとも一般的な解決策が、老眼鏡の使用です。老眼鏡は遠くが見えにくくなる欠点がありますが、遠近両用眼鏡によってその欠点を緩和することもできます。老眼は徐々に進んでいきますので、2、3年ごとに視力にあった老眼鏡に変える必要があります。
仕事やライフスタイルの上で眼鏡の着用が難しいようなケースでは、手術による治療が提案されることもあります。
目が見えにくくなる病気
目が見えにくくなったときに考えられる病気があります。以下に代表的なものを取り上げ、説明します。
白内障
レンズの役割をする水晶体が白く濁ってくる病気です。
白内障はおもに加齢が原因で起こります。生活環境で浴びる紫外線や赤外線などの影響で水晶体内のタンパク質が白濁して濁りを生じます。
霞がかかったように視界がぼやけ、視力が低下して見えづらくなります。また、暗いところではものが見えづらく、逆に明るいところでは光がまぶしく感じてやはり見えにくいと感じます。
一度濁った水晶体が元に戻ることはありません。点眼で進行を遅らせることはできますが、視力を取り戻すには水晶体を取り出して人工の眼内レンズを挿入する手術しか方法はありません。
ぶどう膜炎
ぶどう膜炎とは、眼の内部、ぶどう膜(脈絡膜、毛様体、虹彩の総称)に炎症が起こる病気です。全身の免疫異常や細菌、ウイルス、真菌、寄生虫など、さまざまな原因が挙げられています。
ものがかすんで見えたり、まぶしく感じたりし、視界が歪んだり黒い影が飛んで見える飛蚊症が出たりします。
ぶどう膜炎はさまざまな原因で発症しますので、原因に応じて治療を行います。ただ、原因が不明のケースも多く、治まった後でも再発することもあるため、定期的な眼科の受診が必要になります。
ドライアイ
ドライアイは涙の変質等が原因となって、眼に違和感を感じたり、眼の表面に傷がついたりするなどの症状が起こる病気です。
眼の酷使やエアコンによる乾燥、コンタクトレンズの使用など、生活環境やライフスタイルに潜むさまざまな要因が相俟って、ドライアイになります。また、パソコン・スマホといった電子機器の画面を凝視するとまばたきが4分の1程度にまで減ることが分かっていて、まばたきが減って眼の表面を十分に潤せないためにドライアイを招きやすくなっていることも指摘されています。
ドライアイの治療は、涙の成分を補う点眼薬で行われます。涙に含まれるムチンを補う点眼薬は、ドライアイ改善に効果が期待されています。
外科的に涙の排出口である涙点を塞いで、涙が眼に溜まるような処置をすることもあります。
眼精疲労
眼が疲れて視界がかすむ状態です。眼に違和感を感じたり、痛みを感じたりすることもあります。眼だけでなく、頭痛やめまい、肩こり、吐き気、手足のしびれなど、全身に悪影響を及ぼすことがあります。
眼精疲労の原因は眼の酷使と乾きです。
長時間にわたるパソコン作業やテレビ鑑賞などによって眼の焦点を合わせる筋肉に大きな負担がかかり、眼筋の緊張が首や肩などにも広がっていきます。
また、眼が乾いて眼球表面を十分に潤せないことで、視界がぼやけたり、かすんだりします。
眼精疲労を避けるためには、定期的に休憩を挟んで眼を休めることです。蒸しタオルなどを眼のあたりに置いて温めることも、リフレッシュに効果的です。
その他の目の症状について
よくある質問
片目だけ急に見えにくくなったら何の病気を疑いますか?受診の目安はなんですか?
片目で急に視界がかすむ・暗くなる・一部が欠ける場合、網膜裂孔・網膜剥離、網膜静脈閉塞、視神経炎など緊急性のある原因が隠れている可能性があります。 視界の黒い幕、光が走る、中心が歪むなどの症状を伴うときは当日受診が目安です。 両目の同時悪化よりも片目の急変は病変局在の手がかりになりやすく、早期介入で予後が変わります。
遠くも近くも見えにくいのは遠視でしょうか?老眼でしょうか?
遠視はピントが網膜より奥にあり、遠近ともぼやけやすく、日中も常に調節負荷がかかるため疲れやすいのが特徴です。 老眼は加齢で調節力が落ち、特に近くが見えにくくなるのが主で、40歳前後から自覚しやすく進行は緩徐です。 検査では屈折検査と調節機能の評価を行い、必要に応じて近用の補正や遠近両用設計を選びます。
視力は良いのに「見えにくい」のはなぜですか?
コントラスト感度の低下(白内障初期、ドライアイ)、視野の部分的欠損(緑内障初期)、歪み(黄斑疾患)など、単純な視力表だけでは拾えない異常が原因のことがあります。 細隙灯、眼底・OCT、視野検査を組み合わせることで、見え方の質の低下を可視化し原因に合わせた治療に繋げます。 自覚症状と検査結果のギャップは珍しくないため、違和感は早めに相談を。
「明るい所でまぶしくて見えにくい」は何の病気が多いですか?
白内障では散乱光の増加で昼間のぎらつき・夜間の対向車ライトの眩しさが強まり、視認性が下がります。 ドライアイでも涙膜不安定で光のにじみが起きやすく、屋外や空調下で悪化する傾向があります。 生活に支障が出始めたら、白内障は手術、ドライアイは涙液治療と環境調整で改善を目指します。
近視の進行を遅らせるにはどうすればいいですか?大人と子どもで違いはありますか?
子どもの近視では近業時間の管理、屋外活動の増加、作業距離・姿勢の見直しが基本で、矯正は眼鏡・コンタクトに加えて適応があればオルソケラトロジーを検討します。 大人の近視進行は緩やかですが、強度近視は網膜剥離や黄斑変性など合併症の監視が重要です。 定期検診で眼底やOCTを含めてチェックし、異常の早期発見に努めます。
「歪んで見える」時に最優先で受けるべき検査は何ですか?
中心の歪み・曲がりは黄斑部の病変が疑われるため、OCT(光干渉断層計)で黄斑の断層を評価することが最優先です。 加齢黄斑変性、黄斑前膜、黄斑円孔、黄斑浮腫などでは早期治療が視機能に直結します。 自宅では片目ずつアムスラーチャートでチェックし、異常があれば早めに受診してください。
メガネを替えても見えにくいのはなぜですか?
屈折矯正だけでは改善しない白内障・ドライアイ・角膜不正乱視・黄斑疾患・緑内障など器質的要因の可能性があります。 視力が出にくい場合は、角膜・水晶体・網膜・視神経のどこにボトルネックがあるか総合的に評価します。 「度数の問題」と決めつけず、眼科での詳細検査を受けることが近道です。
受診の前に整理しておくと診断が早くなる情報は何がありますか?
発症時期、片眼/両眼、時間帯や環境での変動(屋外・空調・夜間運転など)、歪みや黒い影の有無、頭痛や吐き気の随伴、既往症や服薬、矯正歴をまとめましょう。 仕事や運転、読書・PC時間など生活で困る場面の具体例も治療方針の決定に役立ちます。 情報が揃うほど、必要な検査(OCT・視野・眼圧など)を効率よく選べます。

